妄想






一人暮らしのスタートは、美容師アシスタント2年目の時。



30年前ですね。



賑やかだった寮をでて、駅から徒歩30分の家賃3万5千円の新築ワンルームで。



はじめて部屋に入った時は高揚感でにやけていたのを覚えています。



サロンまでは片道1時間半を目安に動いていた気がします。







まだ世の中に携帯電話どころか、ポケベルもない時代。



通勤時間が長くなったことで、考え事をすることが増えました。



歩きながら、電車に揺られながら、



いわゆる「妄想」を楽しむ時間になっていました。







二十歳だったこの頃、



妄想といえばほとんどが「あの娘」のことか、



「サロンで自分が人気スタイリストになっている」妄想か、



高校時代の「思い出の振り返り」か、



きらいなあいつを「ひれ伏せさせる」妄想などが多かった気がします。



最後のやつはダークモード全開ですね。







ヘッドフォンから聞こえる音楽によって、



その時の妄想の内容は決まっていたような気がします。



高揚するリズム。



浸るメロディー。



熱い爆音。



1時間半という通勤時間は、



あっという間だったと思われます。







今思えば、



この時間が当時の僕のメンタルヘルスになっていて、



明日への活力となり、



想像力を鍛えられたような気がします。



そして、もし悩みのようなものがあれば、



この時間がなんらかの出口の方向を教えてくれていた。







もちろん先輩や同僚の助けもたくさんありましたが、



最終判断は常に自分であった気がします。



責任を取る人。それは自分。







30年が経ち、



世の中は情報に溢れ、



それによっての恩恵は想像以上だと僕自身痛感しています。



良い時代に生まれたと感じています。







ただ、妄想する時間が足りなくなった気はします。



妄想の中で僕はいつでも最強で、



できないことなど1つもなく、



いつも最高の結果を出せていました。



欲しい状況がいつでも手に入る。



最高の時間。







いまでは車生活となり、



歩くこともほとんどないというお話をよくお客様とすることがあり、



今日の記事の内容を思い出しました。



決して病んでいるわけではありません。









たまには思い出話を。



そう思っただけで、



ネタがなかっただけです。